高3最後の国語の授業で、短歌の連作(複数の短歌を並べて、ストーリーを描いたり複数の視点で詠ったりする)読解に挑戦しました。受験直前に悠長な、と思われるかもしれません。しかし短歌連作は古典の物語文と近い構造で、主語や対象の省略も多く、場面ごとの描写を連ねて書かれます。古典に苦手意識のある生徒にとって、限られた情報をつないでストーリーを把握する練習になればと考え、実践してみました。今回の題材は昨年度の角川短歌賞次席になった「コーポみさき」50首。「自分の意思だけで引っ越しできるんだから、学生じゃないよな」「自分のことは“わたし”しか言わないのに、なんで相手は“あなた”と“きみ”があるんだろ」「“わたし”と“あなた”は異性みたいだけど、どっちが男なんだ?」・・・言葉の使い方に注目しながら、各班で読み解きをしました。
授業の最後で作品解説をすると、意外な真相に驚いていましたが、ある生徒の言った「(場面が)途切れ途切れだから、思い込みで想像してつないでた」が印象的でした。もちろん常識を踏まえて読むことも大切ですが、言葉そのものを正面から受け取ることが必要な場面もあります。真相を知ったときの、彼の「やられた!」には、言葉と格闘したゆえの心地よい疲労感がありました。もしも卒業前にほんの少しでも、新しい読み方と出会えるお手伝いができたなら、こんな幸せはありません。
投稿:高校国語科教諭