聖光見聞録

宗教部主催「夏の黙想会」【聖光見聞録1247】

作成者: Shizuoka-Seiko|23/09/28 7:38

1日目】

夏の京都。静岡とはまた違ったうだるような暑さの中、同志社大学の最寄り駅「今出川」へ迎えに行くと、リュックを背負いスーツケースを持った生徒たちがやってきました。

黙想会の会場になる望洋庵(ぼうようあん)は、京都御所から西へ5分程歩いた場所にあります。カトリック西陣教会の門から敷地へ入り、聖堂の横の細道を奥へ進むと築150年を超える2階建の日本家屋が見えてきます。

たどり着いた生徒たちが、緊張からか小さな声で「お邪魔しまーす」と言って中に入るとシスターが二人、笑顔で迎えてくれました。このシスターはイエスのカリタス修道女会から派遣されて望洋庵に常駐しています。

今回の黙想会は、このシスターが普段している生活に倣って「祈りのある日常」を過ごそうと考えていました。

また今回は、東京の神学院で学んでいる神学生が夏の研修で滞在していたため、彼との交流も予期せぬ良い経験になりました。

 

さて、望洋庵に到着した生徒たちは、荷物を置き施設の紹介を受けます。まず、望洋庵が宿泊施設ではなく「祈りの家」であること。上げ膳下げ膳はされず、自分のことは自分でします。また、朝昼晩には聖務日課と言って、決められた祈りの時間をとります。

そんな説明をしていると、普段望洋庵でキリスト教を学んでいるスリランカ人の女性が母国のカレーを作ってもてなしてくれました。日本では食べる機会の多くないサラッとしたカレーはココナッツの甘味の後にスパイスの辛味が後を引く、夏にぴったりな美味しいカレーでした。「美味しい!」と言いながらおかわりをする生徒も多くいました。その食欲を見たシスターが急遽食材を買い足しに行ったというのはここだけの話です(笑)。

 

美味しいスリランカカレーをいただいた後は、みんなで食器を洗って、戸棚に戻します。毎食後にするこの作業も最初は何をしたらいいか分からず戸惑っていた生徒も、すぐにやるべきことを探して動くことが出来るようになりました。大人が「あれしなさい」「これやりなさい」と言わずとも、その場のみんなが当然のように働くこの空間では、みんながみんなのために動くことができていました。

 

午後からは、京都教区の司祭で、現在ローマでカトリックの勉強をしている大塚神父様とzoomで繋がり、「祈りとは?」というテーマで祈りの基本について学びました。大塚神父様の話は非常に分かり易く、具体的で、祈りの基本である「主の御心のままに」という考え方を噛み砕いて説明してくださいました。その後は、個々に黙想をしながら過ごし、教えてもらった祈りを実践しました。また、実践をとおして感じたことを小グループで分かち合い、最後に全員でふり返りを行いました。ふり返りの中では、進学のこと、祈りそのものについて、人間関係について、それぞれの想いを共有し、少しお互いのことを理解する機会となりました。

 

夕食の準備も全員で行います。普段から料理をする人は手慣れた動きで周りに指示を出しながら、料理が初めてという人はちょっとした盛り付けの装飾や配膳を積極的に手伝い、ここでもみんながみんなのために働く姿が見られました。

 

この頃になると、望洋庵を巣立った「元青年」が訪れてくれて、仕事のことや大学進学のことなど、生徒の話を聞いてくれました。また陽が落ちて涼しくなった頃合いをみて、近くの二条城まで散歩に出かけました。二条城は夏のライトアップイベントを開催しており、夜の特別拝観を楽しみました。

 

【2日目(89日)】

シスターの朝は早いです。朝5時に起床し、庭掃除を行いました。草引きと落ち葉はき。生徒も教員も汗をかきながら体を動かし、目を覚まします。

作業の後は朝課(朝の祈り)をして、朝ごはんの支度をします。2日目ともなると、みんな自分の役割を見つけるのが早く、手際も格段に良くなります。美味しい食事に感謝して「いただきます。」

 

朝食を終えた頃、韓国のチェジュ教区のソ神父様が訪れてくださいました。手には大きなモニターとパソコンを持って。このパソコンのデータを見て驚きました。様々なテーマ、様々な角度での講話のスライドをフォルダで分けて、神父様の講話の引き出しとして保存してあったのです。それも、幼稚園の園児や中高生向けのものまで年代別に分けてどの年代が来ても理解できるように準備されたパソコンを見て、私はひとり感動していました。

さて、ソ神父様はみんなに尋ね、生徒のほとんどが信者ではないことを知って、カトリックひいては宗教とは何かという超入門の講話をしてくれました。科学と宗教の立ち位置の違いや役割の違い。二つは決して対立する物ではなく、担っている役割が違うという話は、中高生にも分かりやすい話だったと思います。

講話の後は、神父様と一対一の面談の時間を一人ずつ設け、悩みを聞いてもらったり、将来の相談にも乗ってもらった生徒もいたようです。

 

面談と黙想の時間を終え、みんなで聖堂に移動したのが1040分、89日は長崎に原爆が投下された日だったので、長崎出身のシスターから短い話をしてもらいました。長崎県民にとってこの日がどんな日なのか、戦争や平和についてどんなことを考えているのか、話を聞かせてもらいました。そして1102分、現地と同じ時刻に黙祷を捧げました。そしてそのままミサに預かり、世界平和と家族や友達との平和を祈りました。

 

午後は、夜に企画していた望洋庵青年との交流会の準備のため、買い出しに行き、必要なものを購入したら、望洋庵に戻ってパーティーの準備です。20人分の料理を手際よく作る生徒、その生徒を同じく手際よくサポートする生徒、同時進行で洗い物を片付けていく生徒、別室に隠れて誕生日を迎えるシスターのサプライズケーキをデコレーションする生徒。ここでもまた、「みんながみんなのために」楽しそうに働く姿が見られました。

 

夜になると望洋庵の青年が7人訪れて楽しい食事会をしました。決して生徒同士で孤立することなく、青年と積極的に交流する姿はとても楽しそうで、また、青年が連れてきた2歳の幼児をかまい、良いお兄さんになっている生徒の姿は、学校や寮では見ることのないとても頼もしい姿でした。

 

食事を終えると、そこにシスターの誕生日ケーキが運び込まれ、みんなで歌を歌ってお祝いをしました。「シスターに喜んでもらいたい」そんな純粋な想いが溢れた空間はみんなが笑顔で、とても居心地の良い素敵な空間でした。

 

パーティーの後はみんなで花火をして楽しみ、青年たちを見送ってひと段落。

 

寝る前の祈りを捧げて就寝となりました。

 

【3日目】

最終日の朝も祈りで始まります。実はこの聖務日課、参加者が半分に分かれて音読する箇所が決まっていたり、読むページや用紙が変わったり、慣れるのに少し時間がかかります。しかし、この頃には生徒たちも慣れて戸惑うことなく半分寝ながら朝課ができるようになりました(笑)

 

朝食をいただいた後は感謝の大掃除です。キッチンのシンク、ガスコンロの下、換気扇、蛍光灯まで望洋庵全体をみんなで手分けしてピカピカにします。さらに聖堂と廊下のワックス掛けまでをやり切って感謝を体現しました。

みんなで一生懸命掃除をして体を動かしたら、昼食をとり、シスターへ感謝を伝え、帰路につきます。関西に残る私には帰っていく生徒の背中が心なしか大きくたくましく見えました。

 

望洋庵での2泊3日は生徒にとっても教員にとってもとても充実した良い時間となったと感じています。望洋庵には「祈り」「学び」「出会い」があります。机の上では得られない、今まで会ったことない人や価値観との出会い。献身的に働く人を間近で見ることで自然と働きたくなるような思いやりのある自分との出会い。生活の中に当然のようにある祈りの時間から得られる癒しや気づき。今まで漠然と見聞きしてきた福音(聖書)の本質的な意味の学び。どれもが有意義で、大人も子供も成長するきっかけとなったと思います。この度の黙想会を実現するにあたり、協力してくださった望洋庵のシスター、青年と元青年、そのご家族、京都教区の神父様方、参加生徒の保護者の皆様、引率の先生方、そして全ての出会いを取り計らってくださった神様に感謝いたします。

 

ありがとうございました。